京滋地震情報

(おことわり)以下の文章および図は、京都新聞に連載されているものを転載したものです。

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2006年6月

(「京都新聞 2006年(平成18年)7月20日木曜日」に掲載)

下部地殻が「犯人」?

内陸の大地震は、海洋プレートの沈み込みにより内陸の断層に徐々にひずみが蓄積されるために発生すると推定されています。しかし、プレート境界では大地震の発生によ
り、蓄えられたひずみがその都度解放されてしまいます。どうして、内陸の断層には数百年以上の長期間にわたってひずみが蓄えられるのでしょうか?
 この間題を解く鍵は地震が起こらない地殻の深いところにあるという考えが、最近注目されています。
 丹波山地の微小地震は、深さ15キロ程度より浅い、地殻の上半分(上部地殻)で起こっています。一方、下半分では地震は起こりません。そこは下部地殻と呼ばれていますが、地下深くにあるので、温度はは300度異常の高温になると、岩石はやわらかくなると推定されています。実験室で地下深くの状態を再現し、岩石を高温・高圧下で変形させる実験が行われています。下部地殻の条件下では、岩石が粘土のように流動しながらゆっくりと変形します。断層は下部地殻内にも存在するのですが、ゆっくりと変形するために地震は起こりません。この現象は「非地震性すべり」と呼ばれています。非地震性すべりにより、直上の断層に徐々にひずみが蓄えられると考えられます。下部地殻の非地震性すべりが、内陸大地震の「犯人」である可能性があります。

(飯尾 能久 ・京都大防災研究所地震予知研究センター助教授)