2001年5月

(「京都新聞 2001年(平成13年)6月21日 木曜日」に掲載)

2001年5月の震央分布図

花折断層は安心か

 花折断層 地震の危険「当面低い」−という見出しの記事が、5月22日の京都新聞に掲載されました。安心された方も多いと思いますが、どれくらい安心していいのか、地震の専門家としての見解を述べます。

 産業技術総合研究所(つくば市)が花折断層の南端にあたる京都市左京区の修学院と今出川の2カ所で断層を掘り起こし、過去に起こった地震の履歴を調べました。前回の地震は、おおよそ2000年前、そのもう一つ前は8000年ほど前だったとわかりました。2回の地震の間隔は6000年ですから、次の地震もその間隔で起きると仮定しますと、次は4000年ほど先という計算になります。これが「地震の危険性は当面低い」という表現になったようです。

 しかし、専門家はこのような単純な計算結果で安心していません。地震を引き起こす断層の活動はそんなに単純ではないからです。

 今回の一連の調査で、全長45キロメートルの花折断層は北半分と南半分が別々に地震を引き起こしたことが分かりました。1662(寛文2)年の地震は断層の北半分で起きたのですが、それでも京都市内で200人以上の方が亡くなっています。少しの安心材料を得たからといって備えを怠ってはいけないのです。

 5月の京都、滋賀での地震活動は比較的静かでした。それでも地震計で観測された地震数は232回もあります。私たちの住む大地は生きています。

(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター長)