2001年7月

(「京都新聞 2001年(平成13年)8月16日 木曜日」に掲載)

2001年7月の震央分布図

琵琶湖で津波は起こるか

 滋賀県志賀町の読者の方から「琵琶湖でも津波が発生するのか」「起こるとしたら、メカニズムや被害は?」という質問をいただきました。

 歴史上、琵琶湖で津波が発生した記録はありませんが、津波が発生する原因は二つ考えられます。一つは、琵琶湖の湖底で大地震が起きた場合で、発生メカニズムは海で起きる津波と同じです。地震によって湖底が上下に食い違うことで、湖水も上下に変化します。それが湖岸に押し寄せてくるのが湖の津波です。ただ琵琶湖は海に比べてスケールが小さいので、この種の津波が発生しても被害が出るほど大きくはなりません。

 二つめは、大規模な山崩れが発生し、多量の土砂が一挙に琵琶湖に流れ込んで起きる津波です。琵琶湖での記録はありませんが、1792年に雲仙岳で起きた地震で山が崩壊し、その土砂が島原湾に流れ込んだため、最大で9mにも達する津波が発生しました。

 津波ではありませんが、地震による地殻変動で、湖岸の低いところが水没することがあります。1662(寛文二)年に花折断層が活動する大地震が起こりましたが、志賀・唐崎両郡で田畑85町(約84ヘクタール)が湖底になったという記録があります。これは地震による地殻変動で湖西一帯が沈降したためと考えられています。

7月の地震回数は314回で、兵庫県猪名川町付近の地震活動が目立ちました。

(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター長)