2002年5月

(「京都新聞 2002年(平成14年)6月20日 木曜日」に掲載)

2002年5月の震央分布図

花折断層に沿った鯖街道

地震・雷・・・と地震は恐ろしいものの筆頭に挙げられていますが、私たちが地震から受けている恩恵もたくさんあります。その一つが道です。京滋でそれとはっきりわかるのは花折断層に沿った国道367号線です。地震が起きるということは断層がずれることですが、一回の地震でずれるのはたかだか数mです。しかし、地震は繰り返し起きますので、そのたびにずれは広がり、山といえども引きちぎられて数百mもずれてしまいます。こうして出来たものの一つが花折断層です。断層すなわち山の切れ目は谷になり、谷には川も流れます。そうなりますと、人は高い山を越えなくても断層沿いに山の向こう側と行き来が出来るようになります。若狭で獲れた魚を都に運ぶのに、丹波の山々を越えなくても往来が容易な鯖街道が花折断層沿いにできたのです。断層は数千年に一度しかずれませんので、数百mもずれるのには数十万年かかります。私たちの「時間の物差し」から見ると長い年月ですが、地質年代から見ますとわずかな時間です。他にも、京滋の近くでは有馬―高槻構造線に沿った西国街道があります。近年では山崎断層に沿って中国自動車道が建設されました。

5月8日午前9時48分頃、滋賀県長浜市の近くでマグニチュード3.3の地震があり、近江町で震度1を観測しました。京北町の周山付近、福井県三方町と滋賀県今津町の境付近の活動は以前から続いているものです。琵琶湖の西岸、北小松付近でも小規模な地震活動が先月から続いています。全体の地震数は478回でした。