2002年8月

(「京都新聞 2002年(平成14年)9月19日 木曜日」に掲載)

2002年8月の震央分布図

異常現象と前兆現象

大地震の前に地下水が噴き出したとか地鳴りがしたという「異常現象」は地震の起こった後では必ずと言っていいほど報告されます。しかし地震のおこる前に、それがたしかに「前兆現象」だと客観的に判断できるかというと、これは非常に難しいことです。

「前兆現象」だと言うには、その現象のあとに続いて起こる地震の「時間」「場所」「大きさ」の3つを予測しなければなりません。これができれば地震予知ができることになりますが、そういう意味での地震予知は現在の地震学では、まだできません。

地震の前に、通常とは違った現象が観測されたとしても、その時点では「異常現象」としか言えません。「異常現象」が地震の「前兆現象」となり得るには、その現象と地震発生との間の因果関係が科学的に解明されなければなりません。また「異常現象」は平常時の状況を基にして判断出来るものですから、平常の客観的な観察や観測データが必要です。

このコラムの毎月の震央分布図から、京滋の通常の地震活動がわかります。去年の5月から先月までの月平均地震回数は469回です。この数が著しく増えた場合は「異常」ですが、去年の8月25日の地震(M5.1)に続いて起こった余震のために、昨年9月の地震数は700回を越えました。そういった「異常」の内容についてもこのコラムでは解説していきたいと思います。

(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター長)