2003年4月

(「京都新聞 2003年(平成15年)5月15日 木曜日」に掲載)

水が地震を引き起こす(2) そのメカニズム

地震は地殻の岩盤がこわれることですが、地球の中は圧力が高いため、粉々にこわれるのではなく、羊羹(ようかん)をナイフでスパッと切ったようにシャープな切れ目ができます。

この切れ目が断層であり、それを境に岩盤が上下または左右に“ずれる”現象が地震なのです。

先月は、水に圧力をかけて地下ふかく注入すると、その周辺で地震が起こることを述べました。これは、もともと地殻の中にあった切れ目(断層面)に水がしみこんで、断層をずれやすくしたためです。

水で濡れた接触面は滑りやすくなることは、日常的にも体験することで、例えば濡れた床をゴム長靴で歩くと滑りやすいのもそのひとつです。

この場合は、床面の薄い水の層がゴム靴で押さえつけられた瞬間、水の圧力がいっきょに高くなって、ゴム底に大きな浮力を生じさせるため、滑りやすくなるのです。

このように、水の存在に加えて圧力をかけるというところが重要なポイントです。

ですから、単に雨が降って断層に水がしみ込んだだけでは、水に圧力がかかっていませんから地震のトリガーにはなりません。

4月の地震回数は258回と、3月の311回よりさらに少なめでした。

(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター長)