(「京都新聞 2004年(平成16年)10月21日 木曜日」に掲載)
9月5日に起きた紀伊半島南東沖の地震(M7.4)は、南海トラフの直下で起きたため、想定されている東海地震や南海地震を誘発するのではないかと心配されました。
もし、5日の地震が南海トラフ沿いで起きる巨大地震と同じように、フィリピン海プレートと陸側のユーラシアプレートの境界で起きていたならば、その懸念は大いにありました。しかし、地震波形から推定された地震断層は、プレート境界ではなく、フィリピン海プレート内だということがわかり、当面の心配は払しょくされました。
しかし、これで南海地震や東海地震の危険が去ったわけではありません。南海地震が30年以内に発生する確率は2001年では40%だったのが、今年の9月には50%になっています。このように発生確率は時間と共に高くなっていきます。それに伴ってプレート内のストレスも高まり、プレート内地震も活発化します。
すでに、ユーラシアプレート内では1995年兵庫県南部地震(M7.3)や2000年鳥取県西部地震(M7.3)、フィリピン海プレート内では2001年芸予地震(M6.7)と5日の地震が起きています。
(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター長)