(「京都新聞 2005年(平成17年)9月15日 木曜日」に掲載)
8月16日宮城県沖でマグニチュード7.2の地震が発生しました。この地域では過去にもマグニチュード7.5程度の地震が繰り返し起きていますので、政府の地震調査委員会は今年3月に「今後30年以内にマグニチュード7.5の地震が発生する確率は99%」と発表していました。
16日の地震が起きたとき多くの専門家は、想定されていた宮城県沖地震だと考えました。確かに震源や地震のメカニズムは想定地震と同じでしたが、大きさはかなり小さい地震でした。想定地震と実際に起きた地震のマグニチュードの差は0.3ですが、エネルギーで比べますと今回の地震は想定宮城県沖地震の3分の1程度しかありません。地震で破壊された破壊面(断層面)を比べてみても、およそ3分の1程度です。
こうなると、今回の地震を想定宮城県沖地震だと言えるのか、言えないのか、判断に苦しみます。調査委員会では議論の末、まだ破壊されずに残っている領域のほうが大きいことを重視し、16日の地震は想定宮城県沖地震ではないと判断しました。残る3分の2が破壊しますとマグニチュード7.4の地震になります。その発生確率は依然99%です。
(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター教授)