2005年12月

(「京都新聞 2006年(平成18年)1月19日 木曜日」に掲載)

地球のCTスキャン

CTスキャンと言えば医療の分野ではよく知られている診断方法ですが、地球の内部を調べるのにも早くからこの手法が用いられています。

医療の場合は超音波やX線が使われますが、地球の場合は地震の波を使います。地球内部で反射あるいは透過してくる波を地震計でとらえ、コンピュータで処理した断層画像、つまりコンピュータ・トモグラフィー(CT)を作り、地球内部を調べています。

地球はコア(中心核)やマントルから構成されていることは以前からわかっていましたが、最近の地球のCTを見ますと、太平洋の下では地球の中心部からキノコ雲のようなものが湧き上がっているのが見えます。またユーラシア大陸の下にはプレートの残骸のような物体が横たわっているのも見えています。

8月に紹介した「丹波山地の直下の水の起源」を調べるための観測も大規模なCTスキャンの一種でした。丹波山地の小さな地震を引き起こす原因と見られる流体の存在も地球のCTスキャンで突き止める事ができました。

このコラムの過去の掲載分は地震予知研究センターのホームページでご覧いただけます。 http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/で[Japanese]→[Outreach]をご覧ください。

(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター教授)