(「京都新聞 2006年(平成18年)2月16日 木曜日」に掲載)
「最初は下からどんと突き上げられるような揺れ、しばらくして横向きにゆさゆさ揺れた」という地震の揺れを経験された方は多いと思います。最初の波が縦波(P波)で、しばらく後のやや大きな揺れが横波(S波)です。
地震計の記録では、この2種類の波がはっきり区別できます。しかし地震観測を始めた頃には、波の物理的な性質がわかりませんでしたので、とりあえず最初の波を英語の最初という意味のPrimaryの頭文字をとってP波、2番目の波にはSecondaryの頭文字からS波と名付けました。
その後P波は地震波の進行方向に伸び縮みしながら伝わる縦波、S波は波の進行方向と直交方向にずれながら伝わる横波であることがわかりました。
このようにふたつの波は地震波の進行方向に対して定義されていますので、地表で私たちが感じる上下方向の縦揺れと水平方向の横揺れとは同じではありません。
にもかかわらず「縦波」と「縦揺れ」、「横波」と「横揺れ」が感覚的に一致するのは、たいていの地震波は地球の深いところから地表に向かってくるからです。つまり地震波の進行方向が下から上で、伸び縮みする「縦波」が「縦揺れ」になるからです。S波が地表で横揺れになる理屈も同じです。
(梅田康弘・京都大防災研究所地震予知研究センター教授)