海底諸観測

Ocean Bottom Observations


 日本列島は細長く周囲を海に囲まれています。また、海溝型巨大地震をはじめとする 重要な地学現象がおきるのも海域です。日本列島の地震活動を正しく理解する為にはこ のような海域で起きる現象を精密に観測することが大切ですが、陸上の観測網からはる か沖合いの現象を詳しく観測することは非常に困難です。そこで、それらの現象が起き ている真上、すなわち海上や海底での観測が重要となります。しかし、電波も光もとど かない深海底での観測には多くの技術的な困難があります。
 地震予知研究センターでは、海底地震計を用いた地震観測や海底地殻変動観測の開発おこなっています。


京大IV型海底地震計

 左図は地震予知研究センターの持つ”京大IV型”海底地震計です。直径約40cmの ガラス製耐圧容器の中に、固有周期2Hzの地震計3成分、アンプ、16ビットAD変換 器、電池、高精度時計等がコンパクトに収められています。6000mの海底で約1ヶ月 間観測をすることができます。地震波形データはMOディスク(容量320MB)に記録 され、地震計を回収した後解析されます。
このタイプの海底地震計は自由落下自己浮上式と呼ばれるものです。気象庁が御前崎沖に 設置している恒久的なケーブル式海底地震計とは異なり、主に臨時の地震観測や地殻構造探 査等の機動的観測に使われています。右図のアニメーションのように、船から投下すると 自重で沈んで海底に達します。観測期間が終了したら、船から超音波の信号を送ってやります。 そうすると、地震計は「おもり」を切り離し、自分の浮力で海面まで浮かび上がります。 これを回収してデータを取り出すわけです。
Obana, K., H. Katao, S. Matsuo and M. Ando, Development of a New Ocean Bottom Seismometer (Model IV of Kyoto University), Bull. Disas. Prev. Res. Inst., Kyoto Univ., 44, 199-210, 1994.


京大III型

海底地震計

 ”IV型”の前に開発された”京大III型”海底地震計です。自己浮上式の海底地震計は京大IV型のように耐圧容器兼浮力材としてガラス球を用いるのが一般的ですが、このIII型はアルミ製の円筒耐圧容器とシンタティックフォームと呼ばれる浮力材から構成されるユニークな姿をしています。その理由は、有人潜水艇で、海底地震計を運び、希望する場所に確実に設置するためです。万一何かの衝撃でガラス球が壊れると爆縮がおこり非常に危険なので、有人潜水艇では扱えません。そこで、このような構造のものを開発したのです。(写真は奥尻島付近水深3000mの海底面に設置されたIII型地震計。”しんかい6500”から撮影。)
Katao, H., M. Ando, S. Matsuo and H. Murakami, Ocean Bottom Seismometer Handled by Submersible Vessel and Its Observation Prior to the 1993 Hokkaido Nansei-Oki Earthquake, Bull. Disas. Prev. Res. Inst., Kyoto Univ., 44, 191-198, 1994.

海底地殻変動観測


 海域における地殻の変動を計測することも地震現象の理解には欠かせません。しかし、海底ではこれまでの陸上の地殻変動観測の技術をそのまま利用することはできません。私たちの開発したこのシステムは海上局におけるGPSキネマティック測位と海上海底両局間の精密音響測距を組み合わせたものです。1998年には相模湾の水深約1500mに設置した海底局の位置を十数cmの精度で求めることに成功しています。
Obana, K., H. Katao and M. Ando, Seafloor Positioning System with GPS-Acoustic Link for Crustal Dynamics Observation -a preliminary result from experiment in the sea-, Earth Planets Space, 52, 415-423, 2000.

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