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大学院入試説明会配付資料(R3年度)

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 日本を含む世界各地で発生する地震の多くは海域で発生しています.一方で,海域の地震観測網は,日本ではDONETやS-netと言った観測網の整備が徐々に進んできましたが,観測点数や観測点密度で言えば陸上に比べ圧倒的に不十分です.このため,海域で発生する地震は理解が震源決定(どこで発生したのか)の精度が不十分で正しく理解することが困難なだけでなく,まだ我々が発見できていない現象が潜んでいる可能性を秘めています.

 私は,これまで日本周辺や他国において海底観測を通じて独自データを取得し,それらを解析することで地震やスロー地震などの現象をより正確に理解するための観測研究を行っています.主たるフィールドは九州東方の日向灘で,東側のプレート間固着が強い四国沖から南側のプレート間固着が弱いと考えられている南西諸島海溝(琉球海溝)の間に位置するプレート間固着の遷移領域です.このようなフィールドは,プレート間固着の不均質性を研究するには打って付けのフィールドと考えており,海陸の観測を長年継続して行っています.日向灘は2011年東北地方太平洋沖地震以前はほとんど注目されていなかった場所ですが,近年では南海トラフ沿いの巨大地震想定震源域の拡張や,いくつかのスロー地震活動に関する研究が進み,小繰り返し地震を含む微小地震からM7クラスの大地震,さらにスロー地震まで様々なサイズおよびタイムスケールのすべり現象の研究ができることから注目されるようになってきました.

 また,地震現象の理解には,過去の活動履歴の情報が非常に重要です.現在の豊富な観測データがない,ちょっと昔のデータを最近の解析手法を用いて再解析し,過去から現在にかけての履歴解明に向けた研究にも力を入れています.私が所属する宮崎観測所では,地震観測点が少なかった1990年台に独自の観測網を構築しており,九州大学や鹿児島大学と協力して過去の古い地震観測データを用いた日向灘の地震活動の研究を進めています.1996年M6.9,M6.7の地震前後では,日向灘では地震性・非地震性のいろいろな現象が起こっていて,これらの研究は次の日向灘におけるM7クラスの大地震に向けた理解を深めるにも重要なテーマだと考えています.

 観測(特に海域観測)は時間的にも体力的にも大変な部分があり,いつもうまくいくとは限りませんが,他の誰ももっていないオリジナルのデータを得られるところが魅力で,運が良いと第一発見者になることもできます(ちなみに私は船にはあまり強くありません・・・).一緒にまだ誰も明らかにしていない現象を解き明かすことにチャレンジしてみませんか?観測航海は年に数回あり,最近はNZでの国際共同観測にも参加するチャンスがあります.他大学や他機関の研究者・学生と一緒に観測は実施されますので,いろんな人脈ができます.これまでの観測で得られたデータもたくさんありますので,観測はちょっと気が進まないけど,解析はしてみたい!という方も歓迎です.ご興味がある方は是非一度,お気軽にご連絡ください.

 防災研で研究指導を受けるには,京都大学の大学院(我々の分野は理学研究科地球惑星科学専攻)に入学し,防災研究所内の研究室に属する必要があります.大学院入試に関しては,理学研究科地球惑星科学専攻の入試情報をご覧ください.例年6月頃に入学説明会も実施しています.

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